豊田空間デザイン室

日々のこと
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『レイモンド・チャンドラー』

updated: 2010年1月25日

「さらば愛しき人よ」(千夜千冊…第1巻  7.行きずりの日々)

 ハメット(マルタの鷹の作家)を信奉するチャンドラーは、中年になってから創作活動に足を踏み入れたpencil  解説にもあるが、新鮮な文体、きびきびした話法、徹底したリアリズムが特徴だ。 貧乏だが、やたらにダンディで、女と友情に弱い私立探偵フィリップ・マーロウに、その昔、「アメリカ」を感じた覚えがある。
 千夜千冊にもあるが、大鹿マロイという魅力的な犯罪者と、それよりさらに蠱惑的(←人の心をひきつけ、惑わすこと)な悪女の見本のようなヴェルマをふんだんに登場させた本書。この二人にマーロウが絡む小気味のよい加速感と倦怠感の切れ味は絶品。
 1930年代のロスアンジェルスと、その周辺の風景描写に思いを馳せながら、久しぶりに読んだ。