豊田空間デザイン室

日々のこと
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『失われた時をもとめて』

updated: 2010年4月29日

「失われた時をもとめて」マルセル・プルースト(千夜千冊…第1巻  7.行きずりの日々)

 プルーストは何しろ長すぎる巨編、、残念ながらかなり以前に第一部「スワン家の方へ」を読んだのみである。国内では古典になるが、「源氏物語」を読むぐらいの長編だbook  いつか、第七部「見出された時」まで通読したいが。 
 ボクにはこの物語のように、ふと口にした紅茶に浸したマドレーヌの味から、蘇るというような思い出し方はない。 が、プルーストは幼少期に家族そろって夏の休暇を過ごした架空の「コンブレー」の町全体が蘇ってくる。 その記憶をきっかけに、当時暮らした家が面していたY字路のスワン家の方と、ゲルマントの方という2つの道のたどり着くところに住んでいる2つの家族たちとの関わりの思い出の中から物語は始まる。 
 「失われた時をもとめて」は記憶を辿る文学だと言われる。 直線的・物理的に過ぎていく時間ではなく、記憶が現在に戻ってきて蘇り、熟成するというように廻っていく円環的、超越的時間だ。 さらに、この文学には土地にひそむ「地霊(ゲニウス・ロキ)」を一貫して表現していることも忘れてはならないようだ。    読みたい本が多くあるので、「源氏」と同様最後まで読むのはいつの日になることだろうか、、。