『檸檬』

updated: 2010年5月24日

　「檸檬」　梶井基次郎（千夜千冊…第１巻　　6．時の連環記）

　高校の頃読んで、また十年以上前に再読。原稿用紙にすれば僅か十数枚の短編だが、文学史に残る作品だ。　梶井は理科系の人間だからか、客観的・物質的な「品」を通して作家と読者の間の交流が成立するものであると書いている。
　要約すると、得体の知れない塊りのせいで、かつては美しいと思えていた花火の束や色ガラスのおはじきや石鹸の包み紙を見ても、何の反応も出来なくなっている重圧から逃れるために、京都の町を散歩するいう話である。　そして、ふらりと丸善に入り、かつてはそこにどぎまぎするように陳列されていた香水壜や煙管やタバコが、興奮すべき物だったのに、それに反応出来なくなっている自分を見つめている。　そこから、有名な最後のシーンで終わるのである。

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